第2回福島吃音懇話会
第2回福島吃音懇話会が2018年8月5日に開催されました。今回は、吃音のある当事者の方、保護者の方向けの講演会・体験談発表と、座談会を開催しました。約40名の参加者が集まりました。
講演会で取り上げられた、「自己開示力の育て方」とテーマでは「吃音をオープンにした方がいい。でもそれが難しい。ではどうするか」とうことが語られました。
体験談発表では、吃音のある中学生が悩んできた過去を話ながらも「吃音のある自分を受け入れて、前向きに生きていく」という言葉が聞かれました。
午後の座談会では、当事者、保護者、支援者の3グループに分かれて行い、現在抱えている悩み等について共有する場所となりました。
午後の座談会の感想
1. 当事者グループ
(9名(男性7名、女性2名)。中学生2名、20~30代6名、60代1名)
自己紹介、ご自分の吃音のこと、最近の出来事について話しをしてもらいました。
社会人の方からは、中学校のころ悩んだこと、就職活動で苦労したこと、仕事上で自信を失うと吃音が大きくなることなどの話が出ました。電話、窓口、人へ説明することの苦手感を話される方が多く、開き直って対応している、やらざるを得ないので何とかやっている、気持ちと呼吸を整えて再度臨む、とのことでした。症状がひどい時には職場に伝え、電話を外してもらう、限られた人に吃音のことを打ち明け代わってもらうという方もいました。学校のような狭い空間ではないので気持ちが少し楽である、職場に吃音のことを理解してもらっているので安心して話せる、という方もいました。経験上、吃音には波があり、状態に合わせて話し方を変えている事、治らなくても軽くなることなどの話もありました。相手は私の伝えたい事をわかってくれる、と相手を信じて伝えることの大切さも語られました。
中学生の二人は黒澤先生のところに通っており、自分も将来、困っている人を助ける仕事に就きたい、と話してくれました。
「誰に一番吃音のことを分かってほしいと思う?」という問いに答えてもらいました。
Ø 一般の人たちにこそ分かってほしいです。
Ø 学校の先生にわかってほしいです。「ゆっくり話して」て言ってくれるけど、それは見当違いのアドバイスで、吃音のことを分かってほしいと思うけど難しいかな。
Ø 小・中・高と「ことばがつっかえちゃう」と先生から説明をしてもらってきたけど、言ってもらっても(吃音のつらさを)分かってはもらえたとは思えない。どうやって伝えたら吃音のことを分かってもらえるかな。
Ø カミングアウトしてもしなくても(周囲の理解は)あまり変わらないような気がします。自分は初対面の人には吃音のことは言いません。
まとめ
Ø 吃音のことを知らない人達全てに吃音のことを理解してほしいです。特に周りにいる人達、からかってくる人達に。吃音のことを話しても分かってもらえないかもしれない、無理かもしれないと思うけど、やっぱり何とかして伝えたいです。
Ø またこういう集まりがあれば案内がほしいし、できれば集まりたいです。
2. 保護者グループ①
(幼児期から小学校高学年の吃音のある子を持つ4名)
このような集まりに初めて参加された方、吃音について学び始めたばかりの方、そしてお子様の年齢が離れていたうえに、時間も短く、私が話すことが多くなってしまいました。
子どもの吃音の波と共に、お母さんの気持ちも波になること、子どもの成長と共に、お母さんの悩みも変化していくこと、子どもと吃音の話ができる関係が大事であること、吃音を学ぶことの大切さ、書ききれませんが様々なことをお話させていただきました。お母さん達の心強い言葉や笑顔を見ると本当にこのように話せる場は大事だと思っています。保護者同士が繋がれる場、一人ではないと思える場の必要性、吃音の正しい理解と啓発の必要性を感じました。
今後、福島県や近郊で、吃音に関する活動が盛んになることを心から願っております。
3.保護者グループ②
(中学生から成人した子を持つ4名)
中学生のお母さん方から、以前は吃音のことを気にしていない様子だったが、だんだん気にし始めたこと、それから黒澤先生のところに通い始め、今のところは安心しており、学校でも頑張っている事をお聞きしました。今後、高校進学で環境が変わること、さらにその先のことについて考えると心配とのことでした。
すでに就職し、独立している子を持つ方は、これから病院に通わせたい、とのことでした。今回、黒澤先生から近くの吃音外来を行っている病院を紹介してもらい、通い始めたそうです。大学生で就活中の子を持つ親からは、昨今、就職面接はグループディスカッションが多く取り入れられており、なかなか大変、という話がありました。親同士、メール等で吃音関係の情報のやりとりなど、交流を行っています。
4.支援者のグループ①
(ST2名、ことばの教室の先生2名)
まず、話題になったのは「発話練習」の方法についてです。
ゆっくりやさしく話す練習、いわゆる流暢性形成法を行っている先生がいました。発話練習を学ぶのに参考となる書籍をいくつか紹介し、黒澤が行っている練習方法について簡単に説明しました。また、「実際にやっているところを見たい」という意見もありました。
もう一つの話題は、自覚のない子、悩んでいない子に対して「吃音を意識させないようにしてほしい」という要望が、保護者の方や担任の先生からくることがあるということです。「本人は吃音に気づいていないから。もしくは悩んでいないから、意識させない方法でお願いします」との要望があるそうです。その場合、どのように関わって良いかわからないという話になりました。
まず、本当に本人が気づいていないのか、周りが「悩んでいない・自覚していない」と言っているだけで、本当はそうではない可能性があるので、そこは注意する必要があること。また、意識させないようにすることの弊害もあることを、要望をしてきた人に丁寧に説明する必要があるだろうという話になりました。
全体として、どの先生も自己開示をできるようにする指導は行っていました。また吃音についての知識を学ぶ、吃音について話し合うなどの指導も行っていました。しかし、リッカムプログラム、メンタルリハーサル法、吃音緩和法、流暢性形成法など、症状に対して具体的にアプローチするための方法については、本を読んでもわかりづらい、研修に行かなければわからない、実際に取り組んでいる人が身近にいないといったことが問題になっていると感じました。
それぞれのST、ことばの先生の現状・問題の把握といった意味ではこの座談会は意味がありました。研鑽の場という意味では、勉強会などを開く必要があると思います。「勉強」といった意味では支援者の座談会をするよりも、支援者は保護者グループや当事者グループに混ざってもらい、それぞれのグループの話を聞いてもらった方が勉強になると感じました。
5.支援者のグループ②
(ST4名)
それぞれの先生方から、自己紹介および現在の指導・支援の状況についてお話をいただきました。
市から参加されたSTの先生からは、構音障害を併せもつ吃音の子を指導している事例をお話いただき、指導内容を伺いました。他の参加者から、指導上の意見をいただいていました。
〇〇から参加されたSTの先生は、公的な機関で幼児の指導をしているが、吃音がある子どもについては、担当医から指導を行わなくてよいと言われているということでした。
市のSTの先生からは、幼児の言語指導する病院が少ないため、一人ひとりが十分時間を確保できないというということでした。公的な機関で幼児を見てくれるところがあればいうことでした。
市のSTの先生からは、親の「治してほしいという希望」にどう対応していくかが課題であるという話をいただきました。
各先生のお話を順にお伺いして、話し合いの時間が終わってしまいましたが、吃音の子どもの指導をしっかりしたいという思いをそれぞれの先生方から感じることができました。